永住許可に関するガイドライン

目次

永住許可申請のポイント

「永住者」「永住許可」は、国籍は母国のままに、日本において仕事を自由に選ぶことが出来るうえに、在留資格の更新がないことなど、他の在留資格にくらべて非常に柔軟に日本に滞在することが可能となっている在留資格です。日本に在留し、他の在留資格を持ちながら、永住許可申請を行ない、許可されれば、永住ビザに変更することができます。

永住許可申請については、通常の在留資格の変更より慎重に審査する必要があることから、

一般の在留資格の変更許可手続きとは独立した規定が設けられており、申請人にも多くの資料の提出が求められ、長い時間をかけて、厳格に審査が行われています。

では、どういう人であれば永住許可を申請することができるのか?

これは法務省出入国在留管理局が「永住許可申請のガイドライン」を公表しており、在留中の外国人が永住申請が出来る状態なのかを確認することが出来ます。

これからそのガイドラインについて解説していきます。

永住許可申請のガイドライン

「永住許可に関するガイドライン」が入管庁HPに公表されており、大きく二つに分けて記載されています。

1.法律上の要件

2. 原則10年在留に関する特例

法務省出入国在留管理庁HP

永住許可に関するガイドライン

1. 「法律上の要件」

これは、この法律上の要件に該当していない場合は、不許可となるということになります。以下の三つの要件です。

それぞれ解釈の問題はありますが、過去の許可・不許可の事例などを参考にして該当しているのかそうではないのか確認していく必要があります。

① 素行が善良であること

これは、法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることが必要とされ、以下を守られていることが必要です。

・日々の生活の中で、懲役・禁錮・罰金を受けていないこと。

・申請時点で、少年法による保護処分を受けていないこと。

・日常生活、社会生活において、違法行為や風紀を乱す行為を繰り返すなど素行が悪い行為をしていないこと。

たとえば、不法就労・オーバーステイ・交通違反、暴行、傷害、大麻・覚せい剤などの犯罪、刑罰・罰金を受けるような人などについては、日本に永住許可することが難しくなります。

② 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること

永住許可申請の必要書類の中には、課税証明書や納税証明書などがあり、申請者の収入や納税状況を3年~5年分確認します。申請時において、これからも安定的に生活をしていくことが出来るのか、家族がいる場合は、扶養していくことが出来るのかを見ています。

収入は、世帯全体の収入とされ、地域ごとに差はありますが、通常何とか暮らしていくことが出来る独身で年収300万が目安と考えられています。家族を扶養する場合はより世帯収入を求められることになります。

③ その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

原則として引続き10年以上本邦に在留していること。

ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」および「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

基本原則として、永住権は10年以上日本に在留している人に申請する権利が与えられます。

そして在留期間10年以上のうち5年以上は、就労ビザで働いている人、又は、配偶者ビザ、定住者などの身分系のビザで在留していることが条件となっています。

それだけ長く在留しているのであれば、今後の生活も日本にいることが想定され、納税など社会上、経済上の様々な観点から国益となるため、永住権を申請することを可能としています。

※なお、永住権の申請については、「技能実習生」や「特定技能1号」で働いた就労期間は含まれません。

これは技能実習等は、永住ではなく、母国へ戻ることが前提となっている資格であるためです。

罰金刑などを受けていないこと。公的義務を適正に履行していること。

公的義務・・・納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務

納税の申告はしているが、一部未納の場合や支払いの遅れがある場合なども、適正に履行とは言えず、不許可となる可能性があります。健康保険料・年金についても未払い未加入は原則不許可となる運用です。

これは、家族全員が審査の対象となります。

永住申請不許可後、現在の在留資格の更新時に、3年から1年になったり、更新自体が不許可になる可能性があります。

現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留資格をもって在留していること。

現在の在留資格での許可期間が3年または5年でなければ、永住申請することが出来ません。

公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

これは感染症などの罹患者、覚せい剤等の中毒者などは、公衆衛生上の観点から有害とされ不許可とされます。

2. 原則10年在留に関する特例

これは先ほどご説明した「1、法律上の要件」のの中のについての説明です。

前述の③のアについては、「原則として10年以上日本に在留しているこ」が求められていますが、実は特例があります。

現在在留中の外国籍の方の在留資格や生活の状況などを考慮して、より短期間で永住許可申請が出来るケースを特例として定めたものです。この特例に該当する方は、以下のような方々です。

① 日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者

② 定住者

③ 難民認定者等

④ 各分野において日本への貢献が認められた者

⑤ 各地域において日本への貢献が認められた者

⑥ 高度専門職70点以上の者

⑦ 高度専門職80点以上の者

⑧ 特別高度人材に該当する者

では一つずつ見ていきます。

1 日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実態が伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留していること。実子等の場合は、1年以上日本に在留していること。

要するに、以下の条件です。

真実の結婚をして3年経過していること。

1年以上日本に住んでいること。

日本人や永住者などと実態のある真実の婚姻が続いており、日本にも1年以上暮しているのであれば、今後も永住する上で暮しやすくする方が国益に適うという解釈。

 在留資格「定住者」の在留資格で5年以上在留していること

日系の方などのように日本に縁のある方などの在留資格「定住者」の方についても、5年以上在留しているのであれば、特例によって永住権の申請を許可しようというものです。

3 難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していること

母国等での戦争や迫害を避け、日本において難民者として認定された方についても、5年以上日本において、永住申請が可能となります。

4 外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる者で、5年以上本邦に在留していること

これは以下のような、日本に対し多大な貢献をしてきた方々が該当します。その上で、5年以上日本での社会生活において問題を生じることなく暮している方については、永住許可の申請をすることができます。

  • ノーベル賞、プリッカー賞・国民栄誉賞、文化勲章などの受賞歴のある者
  • 日本政府から任命され公共の利益を目的とする活動を3年以上行なった者
  • 医療の教育の分野において、日本に多大な貢献のあった者
  • その他、外交分野、経済・産業分野、文化芸術分野・教育・研究分野で日本に対し多大な貢献があった者
  • スポーツではオリンピック入賞者など

法務省出入国在留管理局

我が国への貢献があると認められる者への永住許可のガイドライン

5 地域再生法(平成17年法律第24号)第5条第16項に基づき認定された地域再生計画において明示された同計画の区域内に所在する公私の機関において、出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の規定に基づき同法別表第1の5の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成2年法務省告示第131号)第36号 又は 第37号のいずれかに該当する活動を行い、当該活動によって我が国への貢献があると認められる者の場合、3年以上継続して本邦に在留していること

特定活動36号(特定研究等活動)研究・研究の指導や特定活動37号(特定情報処理活動)情報処理に関する業務を行い、日本に多大な貢献のある方について、3年以上在留している場合、永住申請が可能となります。

6 高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として必要な点数を維持して3年以上継続して本邦に在留していること。
イ 永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められ、3年以上継続して70点以上の点数を有し本邦に在留していること。

現在も日本に在留している人で

高度専門職としてポイント70点以上で3年継続している人 又は、他の資格であったとしても、計算をしてみれば、実質3年前時点からポイント70点以上が継続している人

上記の要件に該当する方について、在留10年 在留3年で永住許可の申請をすることが出来ます。

7 高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「高度人材外国人」として必要な点数を維持して1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められ、1年以上継続して80点以上の点数を有し本邦に在留していること。

現在も日本に在留している人で、

高度専門職としてポイント80点以上で3年継続している人 

又は、他の在留資格で、計算をしてみれば、実質3年前時点からポイント80点以上が継続している人

上記の要件に該当する方について、在留10年 在留1年で永住許可の申請をすることが出来ます。

より高度な人材については、早期に永住権を付与できるようになっています。

8 特別高度人材の基準を定める省令(以下「特別高度人材省令」という。)に規定する基準に該当する者であって、次のいずれかに該当するもの
ア 「特別高度人材」として1年以上継続して本邦に在留していること。
イ 1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として特別高度人材省令に規定する基準に該当することが認められること。

2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入運用されています。

これは前述の高度人材よりもさらに高度な人材を在留資格「高度専門職1号イ~ロ」として受け入れるための制度です。

大学教授や研究者、企業で働く技術者などで年収2,000万円以上の外国人 や 企業経営者などで年収4000万円以上の外国人に在留資格「高度専門職1号」が付与され、一年後変更により「高度専門職2号」が付与可能とされ、多くの優遇措置が施された在留資格となっています。

そしてその在留資格「高度専門職1号」付与から1年後、2号への変更が可能ですが、永住許可申請も可能となっており、これからの仕事の展望や生活状況を考慮し、日本での永住許可申請を選択する方法も準備されています。

日本としては、高度な人材の永住が、国益に資するものと考えているためこのような政策となっています。

まとめ

永住権を取得することは、既に日本で永く暮らしている人やこれからも永く安定して暮らしていきたい人にとっては非常に重要な在留資格です。

しかしながら、ご説明したように、永住許可申請は、国益を重視し、非常に厳格に慎重に審査されています。

納税や健康保険の支払いなど、日本への在留当初から、日々の生活上、注意しておくべきポイントがあるため、事前に行政書士など相談窓口に相談し把握しておくことが大切です。

たとえ、将来永住許可申請をすることが無かったとしても、日本社会で生活する上ではルールを学ぶことは、非常に大切なことですし、家族や友人・同僚などを助けることが出来るかもしれません。

日本で、少しでも、より良い暮らしをしていくために必要なことを、身近な人と話し合うことから始めましょう。

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この記事を書いた人

光野 肇のアバター 光野 肇 福岡県飯塚市の行政書士

福岡県飯塚市で行政書士をしております光野肇です。
相続・遺言、在留資格(ビザ)申請、会社設立の手続きを中心にサポートをしております。

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