「永住ビザ」の特徴と注意点

目次

永住許可の概要

永住者ビザとは何か

「永住ビザ」「永住者」「永住許可」とは他の在留資格を持つ外国人が永住者の在留資格の変更を希望する場合に、法務大臣が与える許可であり、在留資格変更許可の一種と言えます。

日本には在留資格が大きく29種類ありますが、仕事を自由に選ぶことが出来るうえに、在留資格の更新がないことなど、他の在留資格にくらべて非常に柔軟に日本に滞在することが可能となっており、

今後も日本で永く暮らしたい人にとっては、取得したい在留資格です。

このため、永住許可申請については、通常の在留資格の変更より慎重に審査する必要があることから、

一般の在留資格の変更許可手続きとは独立した規定が設けられており申請人にも多くの資料の提出が求められ、長い時間をかけて、慎重に、厳格に審査が行われています。

では、具体的にどのようなメリット、申請方法や注意点があるのかを見ていきましょう。

永住ビザのメリット

永住ビザのメリットは以下のようなことが挙げられます。

在留期限がない。

最大のメリットといっても良いのが、在留期限の制限が無くなり、ビザの更新申請が不要となることです。

運転免許証のように在留カード自体の更新はありますが、数年に一度必ず必要だった手続きが無くなることで、更新が許可されるかどうか心配することがなくなります。

仕事を自由に選ぶことが出来る。

他の就労資格では在留資格の種類によって、仕事の内容に制限があり、それを超えて仕事をすることは不法就労となり、企業も不法就労助長罪となります。

そのため、外国人も企業も決められた範囲内で就職活動や求人を行わなくてはなりません。

しかしながら、「永住者」についてはその制限が一切ないことから、日本人と同じように就職活動や起業も可能ですし、企業側も、「どのような仕事内容も可能な外国人材」として外国人を雇用することができます。

なお永住者の扶養する家族も「永住者の配偶者等」ビザを取得することにより同様の恩恵を受けることが出来るため、家族同時に永住申請を行うことも一つの方法でしょう。

また「日本人の配偶者」ビザから「永住者」ビザへ変更した後に、日本人と離婚した場合、在留資格は「永住者」のままです。他の在留資格に変更する必要はありません。

「永住権」(日本に永住する権利)は、申請人自身が申請し許可を得た権利ですので、離婚によって取り消されることはありません。

申請方法と手続の流れ

申請手続きの流れ

永住許可申請の手続きの方法は、現在の在留資格によって異なりますが、大きく分けて二つです。

①他の在留資格から永住ビザへ変更、②子の出生後の永住権の在留資格取得申請です。

① 他の在留資格から永住ビザへ変更する場合

一般的にはこのケースが多く、以下の在留資格の方からの永住申請が考えられています。

就労ビザ(技術・人文知識・国際業務、高度専門職など)

身分系ビザ(日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など)

家族滞在ビザ(安定した収入のある家族と一緒に申請する場合など)

申請の形式は、「永住許可申請」です。在留資格変更申請ではありません。

永住許可申請は、独自の申請形式のため、現在の在留資格の在留期間が少ない場合は、不法滞在にならないように、在留資格の更新申請をしておくことが必要となる場合もあります。

永住申請をしていても、他の在留資格更新に採用されている特例期間は適用されません。

手続きの流れ

① 永住許可の条件に適合しているかどうかについてチェックする。

         (入管局HPのチェックシートを活用)

② 必要書類を収集・作成する

         (母国書類は翻訳なども必要です。)

③ 出入国在留管理局の窓口で永住許可申請書を提出する。(就労永住審査部門)

         (2025年4月30日現在、永住申請はオンライン申請ができません。)

④ 審査にかかる期間は、6か月から1年程です。

当然のことながらこれまでの過去の申請書類を確認したり、前科前歴の照会などまで、非常に慎重に行われます。

審査期間が長ければ長いほど、収入の減少、転職、離婚、事件や事故などその間に様々なことが起こる可能性があります。そして、その事実を早急に入管へ報告しなければなりません。

また不明な点や追加資料を求められると、その準備に時間が掛かり、その分審査も長くなってしまいます。

申請書類について疑問に思われそうな点などは、補強する資料を作成し、申請書と一緒に提出するなどして、できるだけ追加資料を求められることのないようにすることが審査期間の短縮につながります。

⑤ 結果の連絡

許可・不許可の連絡は、申請人へハガキや封筒で郵送されます。

許可の場合は、10,000円の印紙を郵便局などで購入します。

パスポート・在留カード・収入印紙・申請受付票・届いたハガキを入管に持参することで、新しい在留カードを受け取ることができます。

不許可の場合は、不許可の理由を聞くことができます。

パスポート・在留カード・その他の資料を入管に持参します。理由を聞くことで再申請が可能なのかを確認することができますので、必ず入管に行きましょう。

※行政書士などに永住許可申請を依頼している場合は、入管からの連絡や結果通知は、行政書士の事務所に届きます。

新しい在留カードの受け取りについても、行政書士が代行することが可能です。また不許可の理由を聞きに行く際に、ご本人に同行することも可能です。

永住ビザの必要書類の詳細については、改めてケースごとに詳しくご説明します。

② 在留資格取得手続による「永住者」申請(永住者の子の出生後の手続き) 

まず子の出生後は、14日以内に市役所などに出生届を行います。(出生届受理証明書や住民票を発行する)

出生後30日以内に限り永住者」の在留資格を取得する手続きを行うことができます。

審査では、両親の在留状況が審査されます。

30日を経過している場合は永住申請はできません。

この場合は「永住者の配偶者等」での申請となります。「永住者の配偶者等」で、1年在留することで「永住者」への申請も可能です。

60日を経過すると、子は在留資格がない状態ですので、不法残留(退去強制事由)となってしまいますので注意が必要です。

生まれた子が永住者ビザの許可を受けるためには、出生後早急に申請する必要があります。子の出生前に、申請についての計画を立て、不明なことは行政書士などに相談し、必要書類を収集しておくなど余裕をもって準備をしましょう。

永住許可申請手続きの注意点

審査のポイント

永住許可申請のために、クリアすべき条件があります。

以下は、永住許可に関するガイドラインといわれるもので入管局HPに公表されています。

 素行が善良であること

  法律を遵守し日常生活においても、住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。

 独立の生計を営むに足りる資産、又は技能を有すること

  日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て、将来において安定した生活が見込まれること

 申請人の永住が日本国の利益になると認められること

ア 原則10年以上在留していること

  (そのうち5年以上就労又は身分系の在留資格を有していることが必要)

イ 罰金・懲役を受けていないこと。

  納税・年金等公的義務の支払いが適正に行われていること。

ウ 現在の在留資格の在留期限が、3年又は5年での許可であること。

エ 公衆衛生上の観点から有害となる恐れがないこと。

上記アの在留期間については、原則10年在留に関する特例が公表されており、在留期間10年以下でも永住申請が出来る条件やケースが定められています。

永住許可に関するガイドライン・原則10年に関する特例については、次の記事で詳しくご説明します。

不許可の事例・注意点

永住許可申請が不許可にならないために注意すべき主なポイントを見ていきます。

  • 過去の申請との内容の矛盾

過去の変更申請や更新申請などの申請内容と異なる内容で、永住許可申請した場合に、不許可となる場合があります。

入管局としては、内容に不審なところや疑義があるのではないかということになり、現在の有効な在留資格についても、次回の更新が不許可となったり、在留期限が3年から1年になってしまうこともあります。

住所が変更されていた場合、学校や会社が名称や所在地を変更した場合、学校や会社自体が無くなった場合、学校や会社を辞めたりした場合などに14日以内に入管へ届出を行う必要がありますが、その届出を忘れているなどの場合も、永住申請時に、矛盾が生じてしまいます。

  • 税金や年金などの支払いの遅れ、年金などの未納・未加入

日本においての義務である、住民税、国民健康保険税・年金などの社会保障等について、技術・人文知識・国際業務ビザの方の永住申請では、直近5年分の証明書類を求められます。

日本人の配偶者等などでは1年分又は3年分となっています。その期間は遅れることなく、全て支払いが完了している必要があります。

また扶養する家族についても同様です。会社経営者の場合は会社に関する税金の支払いも遅れや未払いがないことを確認しましょう。

支払いが遅れている状況があれば、申請不許可となる可能性が非常に高くなってしまいますので、支払い金額、支払い期限、また転職時の支払い忘れなど、自分自身が支払うべきものを正確に管理し、遅れが絶対に無いようにすべきです。

  • 過去に交通違反等がある

例えば、交通違反などの軽犯罪歴が数回あるだけで素行が悪いこととされたり、申請人が永住権を取得することが、日本にとって国益をもたらすとは言えない。とされたりと不許可の可能性が高まります。

  • 永住許可申請中に、転職や収入の減少、離婚など状況の変化により永住申請条件に該当しなくなってしまう。

永住申請の必要書類のひとつに「了解書」というものがあり、申請人が署名をし、提出します。

これは、申請人の入管に対する約束事として、申請書の内容に変更があった場合は入管局へ報告すること。について明記されています。

永住申請期間中に起こった変更事項については、必ず入管局に報告しなければなりませんし、報告がないまま、永住許可が出た場合、変更が発覚したあとに永住許可が取り消されることもあります。

まとめ

永住者となることで、これまでいつも心配していたビザの更新も無くなり、自分の国籍のまま、日本で安定した生活をおくることが出来ます

その反面、永住権という非常に重大な権利ですので、日本国の国益となる人を許可要件とするなど、他とは異なる特別な審査基準を設け、慎重に、厳格な審査がおこなわれています。

将来、永住申請を少しでも考えているのであれば、事前に行政書士などの専門家に相談をし、日々の生活の中で注意しておかなければならないことを早めに理解しておくなど、日頃から対策をしておくことで、スムーズに永住申請手続きを行うことが出来ます。

申請に必要となる書類は非常に複雑ですので、ぜひご相談されることをお勧めします。

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この記事を書いた人

光野 肇のアバター 光野 肇 福岡県飯塚市の行政書士

福岡県飯塚市で行政書士をしております光野肇です。
相続・遺言、在留資格(ビザ)申請、会社設立の手続きを中心にサポートをしております。

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