帰化申請の特徴と注意点

目次

帰化の概要

帰化とは何か

「帰化」とは、国籍法に則り、日本国籍が付与され、日本国民となることを言います。

また、日本は、二重国籍を認めていません。

ですから、原則元々の外国籍を離脱し、日本国籍のみとなります。

帰化申請は、日本人として生きていくための手続ですので、当然のことながら非常に厳しいものとなっていますが、許可が得られれば安定して日本で暮していくことができます。

申請者が15歳未満の場合は、親などの法定代理人が手続きを行うことになります。

帰化には、普通帰化 簡易帰化 大帰化の三つのケースが国籍法に定められています。

では、具体的にどのようなメリット、申請方法や注意点があるのかを見ていきましょう。

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帰化の特徴

1 在留資格が必要ではなくなる。

最大のメリットといっても良いのが、在留資格が不要となることです。

日本国籍となることで、在留資格管理制度で管理されなくなるため、在留資格や在留期間も不要となり、日本人と同じように生活することができます。

2 日本戸籍取得、日本名の取得

外国籍の方については、これまで住民票のみの記載でした。他の在留資格・日本人の配偶者等などの場合、婚姻していても、相手日本人の戸籍には入ることは出来ませんでしたが、日本国籍となることで、夫婦同じ戸籍に記載されることになります。

また、戸籍に記載するため、日本名を取得します。帰化が許可された後は、日々の生活の中で、日本人として、日本名を使用することになります。

3 日本のパスポートを取得します。

日本のパスポートは世界で非常に高い信頼を得ており、ビザ免除で多くの国に渡航することが可能となっています。

入国や出国も再入国手続がなく、非常にスムーズになります。

4 日本人でなければ受けることが出来ない権利を受けることが出来ます。

選挙権、公務員受験・社会保障制度などの日本国民の権利を受けることができます。

5 スポーツなどで、日本代表として、国際大会に出場が出来ます。

永住権との違い

帰化と永住許可では以下のようなことが異なります。

  • 申請先    ・・・ 帰化許可申請は法務局。  永住許可申請は出入国在留管理局です。
  • 国籍     ・・・ 帰化後は日本国籍となる。 永住者は母国のままです。
  • 戸籍     ・・・ 取得編纂されます。    永住者は取得できません。
  • 外国人登録手続き・・ 帰化後は不要です。    永住者は必要です。
  • 再入国許可  ・・・ 帰化後は不要。      永住者は必要です。
  • 退去強制処分 ・・・ 適用されません。     永住者には適用されます。
  • 参政権    ・・・ 帰化後は選挙権・被選挙権があります。永住者には原則参政権はありません。

申請方法と手続の流れ

申請方法

帰化許可申請の窓口は、住所地を管轄する法務局です。(在留資格の申請は、出入国在留管理庁)

一般的には、書類の正式受付・受理まで、合計3回以上は、法務局に相談や書類の確認などで面談に行く必要があります。

福岡法務局 | 帰化について

申請の流れ

① まず管轄の法務局国籍課に電話をし、初回の事前相談予約をする。

(帰化の相談が多い場合、予約日が3か月以上先になることもあります。)

予約日に相談質問票などを持参の上、法務局へ行き、帰化申請の許可の可能性を含め、法務局担当官と話し合い、確認や相談をします。帰化許可申請の必要書類一覧表などの案内を受けます。

② 案内された必要書類を収集し、申請書類を作成します。

母国の書類や日本国内の書類、職場の書類を収集します。母国書類には翻訳文なども必要になります。収集した書類を元に、申請書(数種類)を作成します。

③ 収集した書類や作成した書類を、法務局に持参し確認して頂きます。(事前予約が必要)

申請書類や戸籍が揃っているか、など審査に必要な書類の不足がないかどうかをチェックします。

④ 帰化許可申請書類の正式受付、受理。

前回指摘された不足書類の収集や申請書の修正をし、帰化申請書の正式な受付。

受付後は、書類の具体的な内容について、申請人の犯罪や納税状況などの過去の日本での状況の確認、書類との整合性など確認調査や審査が開始します。(3ヶ月以上)

⑤ 申請後、申請書類の内容について、法務局で、申請人やその家族と面談・質問があります。

申請書類や審査内容を踏まえて、申請人やその家族に対し、申請書類の内容や事実関係の確認や現状について、質問されます。

その後も追加書類などの対応をしながら、許可を待ちます。

⑥ 帰化の許可

帰化申請先の法務局で調査確認が行なわれた後、法務省本省に書類が引継がれ、さらに本省での審査が行なわれます。

そして法務大臣が最終的な判断を行ないます。最初の相談からこの帰化許可が出るまで、おおよそ、1年半ほどの時間を要します。

結果は、法務局から、申請人本人へ通知されます。

法務局にて手続を行ない、市役所等で帰化の届出をすることで戸籍が編纂されます。

当然のことながらこれまでの過去の申請書類を確認したり、前科前歴の照会などまで、非常に慎重に行われます。審査期間が長ければ長いほど、収入の減少、転職、離婚、事件や事故などその間に様々なことが起こる可能性があります。そして、その事実を早急に法務局へ報告しなければなりません。

また申請書類に不明な点があったりや追加資料を求められると、その準備に時間が掛かり、その分審査も長くなってしまいます。

申請書類について疑問に思われそうな点などは、補強する資料を作成し、申請書と一緒に提出するなどして、できるだけ追加資料を求められることのないようにすることが審査期間の短縮につながります。

帰化許可申請の注意点

審査のポイント

帰化の申請のためには、以下の国籍法5条に記載されている最低限の要件(普通帰化)をクリアしていることが必要です。

  • 住居要件・・・引き続き5年以上日本に住所を有すること
  • 能力要件・・・18歳以上で、本国法によって行為能力を有すること
  • 素行要件・・・素行が善良であること
  • 生計要件・・・自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産、又は技能によって生計を営むことが出来ること
  • 喪失要件・・・国籍を有せず、または日本の国籍によってその国籍を失うべきこと
  • 思想要件・・・日本国政府を暴力で破壊することを企て、もしくは主張する政党を結成し、もしくは加入したことがないこと
  • 日本語要件・・日本人として暮らしていくことが出来る最低限度の日本語能力が必要です。小学生低学年2年生3年生レベル。

また国籍法6条、7条、8条は簡易帰化と呼ばれ、上記に記載した5条より緩和された条件が記載されています。

この緩和要件に該当すれば、より早く帰化許可の申請をすることが出来ます。

これらの条件については、次の記事にてさらに詳しくご紹介します。

帰化許可申請の注意点

帰化許可申請において、注意すべき主な四つのポイントを見ていきます。

1 虚偽申告・過去の申請との内容の矛盾

過去の変更や更新申請などの申請内容と異なる内容を記載し、または虚偽の内容を記載し、帰化の申請をした場合に、不許可となる場合があります。

法務省では、申請人が帰化申請をした後、申請人の過去の生活状況や内容の記録を、長期間かけてすべて調査・確認します。

内容に不審なところや疑義があることについて、説明する文書がない場合、不許可とされます。法務局は不許可の理由については公表していませんので、自分たちで考え直す必要も出てきます。

住所が変更されていた場合、学校や会社が名称や所在地を変更した場合、学校や会社自体が無くなった場合、学校や会社を辞めたりした場合などに14日以内に入管へ届出を行う必要がありますが、それがされていない場合も申請に矛盾などが生じます。

2 税金や年金などの支払いの遅れや未納・未加入

日本においての義務である、住民税、国民健康保険税・年金などの社会保障等について、証明書類を求められます。

全て支払いが完了している必要があります。未納があれば追加で完納しておくことが必要です。

また扶養する家族についても同様です。会社経営者の場合は会社に関する税金の支払いも遅れや未払いがないことを確認しましょう。

支払いが遅れている状況があれば、申請不許可となる可能性が非常に高くなってしまいますので、支払い金額、支払い期限、また転職時の支払い忘れなど、自分自身が支払うべきものを正確に管理し、遅れが絶対に無いようにすべきです。

3 過去に交通違反等がある

例えば、交通違反などの軽犯罪歴でも回数が多い場合、素行が悪いこととされることは、消極評価となります。

4 法務局への報告義務を怠ってしまった場合。

帰化許可申請中に、転職や収入の減少、離婚や事件事故など、現在の状況に変更や変化があった場合、必ず申請先の法務局へ報告しなければなりません。

出張や親族に会うために日本から出国することになった場合でも、帰化申請中は、事前に法務局に報告しなければなりません。

長期間の出国などは出来るだけ控えるようにした方が良いでしょう。

まとめ

帰化申請が許可されることで、日本人となります。

これまでいつも心配していたビザの更新も無くなり、日本で安定した生活をおくることが出来ます。

しかし、その反面、母国へ帰ろうとすれば、これまで不要であったビザが必要になったり、母国でこれまで受けられたサービスが受けられなくなるなどの不都合も出てきます。

出来ることならば、物理的な便利さよりも、国籍を替えること、日本で、日本人として生きていくことの重みをご理解いただき、永住許可申請ではなく、帰化申請を選ぶ決断していただければと思います。

長期間、日本で生活をされていく中で、将来帰化することをお考えの場合、事前に行政書士などの専門家に相談をし、日々の生活の中で注意しておかなければならないことを早めに理解しておくなど、日頃から対策をしておくことで、スムーズに帰化申請手続きを行うことが出来ます。

申請に必要となる書類は非常に多く複雑ですので、ぜひご相談されることをお勧めします。

当事務所でも、将来の展望がイメージしていただけるよう、ゆっくりとご説明させていただきます。

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この記事を書いた人

光野 肇のアバター 光野 肇 福岡県飯塚市の行政書士

福岡県飯塚市で行政書士をしております光野肇です。
相続・遺言、在留資格(ビザ)申請、会社設立の手続きを中心にサポートをしております。

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