遺言執行者とは?選任すべきケース・役割・手続きの流れをわかりやすく解説

1. 遺言執行者とは?
遺言執行者の基本的な役割
遺言執行者の役割は、遺言書に記された財産の分配や認知・廃除などの手続きを、法律に基づき、確実に実現することです。
たとえば、預貯金の解約や不動産の名義変更、各相続人への通知など。
遺言執行者は、第三者として中立的に手続きを進め、各相続人の負担を軽減し、スムーズに相続手続きを終了させることが出来ます。
遺言執行者と相続人の違い
遺言執行者と相続人は、役割も立場もまったく異なります。
遺言執行者は「手続きを行う人」、相続人は「財産を受け取る人」です。
また遺言執行者が遺言書の内容を実現するために、相続財産の調査や名義変更などの事務を担うのに対し、相続人はその結果として財産を取得する立場となっています。
遺言執行者は、相続人全員に対して、遺言執行者であることを通知しなければならず、また財産調査・財産目録の作成、提示、遺言書の内容を実現するために必要な事務手続きやその他の付随手続きを行い、執行手続きを進め完了する責任があります。
なお、財産を受け取る相続人自身が、遺言執行者として事務手続きをすることも可能です。
遺言書の内容を考える際に、遺産を受け取る予定の相続人を、遺言執行者とすることも多々あります。
🧭 図解:遺言執行者の基本的な役割
| 遺言執行者の役割 | 内容 |
| ✅ 遺言内容の実現 | 遺言書に記載された内容を法的に執行する |
| ✅ 相続財産の調査 | 預貯金・株・不動産などの財産を確認・整理 |
| ✅ 名義変更・解約 | 不動産登記、銀行口座解約などの手続きを代行 |
| ✅ 相続人への通知 | 相続人に対して遺言内容を伝達し、必要な対応を促す |
| ✅ 財産目録の作成 | 相続財産の一覧を作成し、相続人に提示 |
| ✅ トラブル防止 | 中立的な立場で手続きを進め、感情的対立を回避 |
2. 遺言執行者を選任すべきケース
不動産や預貯金の名義変更が必要な場合
不動産や預貯金の名義変更が必要な場合、遺言執行者を選任することで手間や時間をかけずに手続きが完了します。
事務手続きのために、市役所、税務署、金融機関や法務局へ通い、さらに専門的な知識と正確な書類作成をおこなう必要があります。
相続人が複数いる場合、不動産の名義変更の登記申請の為には、相続人全員の同意や署名・印鑑証明書などが必要となり、書類作成などの手続きが非常に煩雑となります。
遺言書を作る際に、遺言執行者として、行政書士などを選任していれば、遺言者の死亡後、遺言書の内容の執行手続きをすべてを一括して進めることができ、相続人は委任するだけで、ほとんどの事務手続きを完了させることが出来、多くの負担を軽減できます。
相続人が高齢・未成年・障がい者の場合
相続人の中に高齢者・未成年者・障がい者がいる場合は、遺言執行者を選任しておくことを強く強くお薦めいたします。
これらの方々が自力で相続手続きを進めることは現実的に困難であり、代理人や補助者の関与が必要になるケースが非常に多いのが現状です。手続きがストップしてしまうと、相続人の皆様の気持ちが冷めてしまい、再開することが非常に難しく、長期間放置することになってしまいます。
その後、相続人が死亡し、孫や甥や姪までも手続きに関わることになってしまいます。
未成年者が相続人の場合は、家庭裁判所の許可申立てや、特別代理人の選任申立てが必要になることがあります。このような場合にも、遺言執行者が相続人の権利を守りながら円滑に手続きを進めることが可能です。
相続人が遠方に住んでいる場合
相続人が遠方に住んでいる場合は、遺言執行者を選任することで手続きの負担を大幅に軽減できます。相続手続きには金融機関や役所へ訪問することが多く、遠方からの対応は時間的・経済的に大きな負担となります。
遺言執行者がいれば、現地での手続きを代行できるため、相続人は安心して任せることができます。
相続人の居住地が離れている場合は、遺言執行者に対し、必要な業務を記載した委任状を渡し、迅速に対応していただくことが良いかと思います。
東京に住む相続人が福岡の不動産を相続する場合、不動産の名義変更や場所や境界の特定、付随する売買手続き等、現地での立ち合いが必要になることもあります。細かい打合せなども専門家にお任せした方が短期間で解決することが出来ます。
3. 遺言執行者になれる人・なれない人
誰でもなれる?民法上の制限
遺言執行者には誰でもなれるわけではなく、民法上の制限があります。結論として、未成年者や破産者などは遺言執行者になれません。
民法第1009条では「未成年者および破産者は遺言執行者となることができない」と定められています。これは、相続人の利益を守るための安全装置でもあります。したがって、遺言執行者を指定する際は、法律上の資格を満たしているかを必ず確認することが重要です。
相続人が遺言執行者になる場合の注意点
相続人のうち、長男が遺言執行者に指定されている場合、他の兄弟が「不公平だ」と感じてしまうと、手続きが滞る可能性があります。
こうしたトラブルを避けるためには、相続人が執行者になる場合でも、事前に家族間でコミュニケーションをとり、合意や理解を得ておくことが望ましいです。
専門家(行政書士・司法書士・弁護士)を選ぶメリット
専門家は法的知識と実務経験を活かして、確実かつ円滑に手続きを進めてくれます。
相続手続きには、金融機関や市役所などへ訪問し、財産調査、名義変更、相続人への通知等の書類作成など複雑な業務が含まれ、一般の方には非常に負担が大きいです。
行政書士は、金融機関や証券会社にて預貯金、株などの解約承継手続き、市役所での戸籍の調査、財産目録の作成、相続関係説明図の作成、司法書士は法務局への登記申請、弁護士は紛争対応など、それぞれの専門分野で力を発揮します。
専門家に依頼することで、相続人の精神的・時間的負担を軽減できます。したがって、安心して相続を進めたい方には、専門家の選任をおすすめします。
📊 図解:遺言執行者になれる人・なれない人
| 区分 | なれる人 | なれない人 |
| 法的資格 | 成年者で破産していない人 | 未成年者、破産者(民法第1009条) |
| 相続人 | なれる(ただし注意が必要) | – |
| 専門家 | 行政書士、司法書士、弁護士など | 資格がない者は不可 |
| 推奨される人 | 中立性があり、実務に詳しい人 | 利害関係が強く、感情的対立が予想される人 |
4. 遺言執行者の選任方法と手続き
遺言書で指定する方法
遺言執行者は、遺言書に記載することで事前に指定することができます。
遺言書に明記されていれば、家庭裁判所の手続きを経ることなく、すぐに執行者としての権限が発生するからです。
たとえば、公正証書遺言や自筆証書遺言に、
「遺言者○○の妻〇○を遺言執行者に指定する」と記載しておけば、相続人や関係者はその人物を中心に手続きを進めることができます。
家庭裁判所に申し立てて選任する方法
遺言書に遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所に申し立てて選任してもらうことができます。
遺言書に執行者の記載がなく、相続人が高齢や未成年である場合、家庭裁判所が専門家を選任することで手続きが円滑に進みます。
したがって、遺言書に指定がない場合でも、裁判所の制度を活用することで遺言執行者を選任出来、安心して相続を進めることができます。
申立てに必要な書類と費用
家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てる際には、所定の書類と費用が必要です。
たとえば、必要書類には「遺言書の写し」「相続人の戸籍謄本」「申立書」などがあり、費用としては収入印紙(800円程度)と郵便切手が必要です。また、専門家に依頼する場合は別途報酬が発生します。
5. 遺言執行者の業務内容と流れ
遺言執行者の主な任務一覧
遺言執行者の主な任務は、相続財産の調査・管理・分配などが一般的な任務です。
預貯金や株の解約承継、不動産の名義変更、相続人全員への通知、財産目録の作成などが代表的な業務です。
1 業務の流れ(通知・財産調査・名義変更など)
遺言執行者の業務は、一定の流れに沿って進める必要があります。
通知・調査・執行の順に進めることで、遺言内容を円滑に実現できます。
大まかな流れとしては、まず①相続人に遺言内容を通知し、次に②預貯金や不動産などの財産を調査・整理します。
その後、③変更や解約などの実務を行い、最終的に相続人へ財産を引き渡すことになります。
相続人への報告義務と善管注意義務
遺言執行者には、相続人への報告義務と善管注意義務が法律で定められています。これらの義務は相続人の権利を守り、執行者の信頼性を担保するために非常に重要です。
遺言執行者は、財産を管理・処分する立場にあるため、情報の透明性と誠実な対応が求められます。
たとえば、財産目録の作成や進捗状況の報告を怠ると、相続人との間に不信感が生まれ、手続きが滞ることがあります。
また、善管注意義務とは、一般的な注意義務よりも高い水準で誠実に業務を遂行する責任を意味します。したがって、遺言執行者は、法的義務を十分に理解し、誠実に対応することが重要です。
📊 図解:遺言執行者の業務内容と流れ
| 業務ステップ | 内容 | ポイント |
| ① 相続人への通知 | 遺言内容を関係者に伝える | 誤解やトラブルを防ぐ |
| ② 財産の調査・整理 | 預貯金・不動産・有価証券などを確認 | 財産目録の作成が重要 |
| ③ 名義変更・解約 | 不動産登記、口座解約などを実行 | 法的手続きが必要 |
| ④ 財産の引渡し | 相続人へ財産を分配 | 遺言内容に沿って実施 |
| ⑤ 報告・義務履行 | 相続人への報告、善管注意義務の遂行 | 信頼と透明性の確保 |
6. 遺言執行者に支払う報酬と費用
専門家に依頼する場合の費用感
専門家が担う業務は法的知識と実務経験を要し、相続人の負担を大幅に軽減できるからです。
たとえば、行政書士に遺言執行を依頼する場合、預貯金の解約や財産目録の作成、不動産登記のサポートなどが含まれ、報酬は30万円ほど~。また亡くなられた方の遺産額の数パーセントなどの算定方法が多いです。
弁護士の場合は、紛争対応も含まれるため、さらに高額になることがあります。したがって、専門家に依頼する際は、業務範囲と費用を事前に確認し、納得のうえで契約することが重要です。
費用対効果をどう考えるか
遺言執行者に支払う報酬は、費用対効果の観点からも検討すべきです。費用以上の安心と手続きの円滑化が得られるなら、報酬は妥当な投資といえます。
遺言執行者がいない場合、相続人の誰かが代表となり、役所や郵便局、銀行などに通うなど、非常に複雑な手続きを自力で行う必要があり、時間的・精神的な負担が大きくなるからです。
たとえば、相続人が遠方に住んでいたり、法的知識がない場合、専門家に依頼することで手続きがスムーズに進み、トラブルも回避できます。
結果として、相続人同士の関係も良好に保てる可能性が高まります。
したがって、報酬の金額だけでなく、得られる安心と効率を総合的に判断することが大切です。
📊 図解:遺言執行者の報酬と費用の考え方
| 項目 | 内容 | 相場 | ポイント |
| 報酬の決め方 | 遺言書に記載/相続人と協議 | 数万円〜数十万円 | 明文化でトラブル防止 |
| 専門家への依頼 | 行政書士・司法書士・弁護士など | 30万〜 | 業務範囲と費用の確認が重要 |
| 費用対効果 | 手続きの円滑化・安心感 | 状況により異なる | 費用以上の価値がある場合も |
7. 遺言執行者を指定しないとどうなる?
相続人が手続きを行う場合のリスク(重要!!)
遺言執行者を指定しないと、相続人が手続きを担うことになり、さまざまなリスクが生じます。たとえば、兄弟間で遺産分割の意見が食い違うと、名義変更や財産の引渡しが進まず、感情的な対立に発展することもあります。
遺言による贈与(遺贈)の場合、不動産の名義変更に際し、通常は、不動産を取得する人(受贈者)と、不動産を取得しないその他の相続人の共同申請になります。
要するに、他の相続人の協力が必要になるということです。仲が良く協力的であればよいのですがそうでない場合、印鑑証明書の提出を拒む方もいるかもしれません。
しかしながら、遺言執行者が選任されていれば、その他の相続人の協力は不要となり、遺言執行者によって遺贈による不動産の名義変更に対応することができます。このように遺言執行者を指定することで、こうした負担やトラブルを未然に防ぐことができます。
家庭裁判所での選任手続きの手間
遺言執行者が遺言書に指定されていない場合、家庭裁判所で選任手続きを行う必要があります。
この手続きは、時間と労力が非常にかかり、相続人にとって大きな負担となります。
提出書類の収集では、遺言書の写し、相続人全員の戸籍謄本、申立書、収入印紙などを準備し、裁判所に提出する必要があります。審査には数週間〜数ヶ月かかることもあり、相続手続き全体が遅れる原因になります。
したがって、遺言書に遺言執行者を明記しておくことで、こうした手間を回避し、スムーズな相続手続きをおこなうことができます。
8. よくあるご相談と当事務所のサポート
「親の遺言に執行者がいない…どうすれば?」
遺言書に遺言執行者の指定がない場合は、家庭裁判所への申し立てにより、遺言執行者を選任することも可能です。相続人全員で遺言書の内容どおりに合意していれば、代表相続人が事務手続きを行うことも可能です。
民法では、遺言執行者が不在の場合は相続人や利害関係人が裁判所に選任を求めることができると定められています。
たとえば、親の遺言に認知や廃除の記載がある場合、相続人が手続きを行うのは難しく、遺言執行者の選任が必要になります。
「自分が執行者に指名されたけど不安」
遺言執行者に指名されたものの、何をすればよいのか不安を感じる方もおられるかと思います。そのような場合は専門家のサポートを受けることで、責任を果たしながら安心して業務を遂行できます。
遺言執行者には、財産調査や名義変更、各相続人への通知義務など多くの法的業務が求められ、個人で対応するにはとても負担が大きいからです。
相続財産の中に、不動産や有価証券が含まれる場合、登記や解約手続きは、非常に複雑なため、時間を要します。
当事務所では、遺言執行者としての業務の代行も可能です。
遺言執行者に指名された方は、早めに専門家へ相談することで安心して役割を果たせます。
当事務所に依頼するメリットと対応範囲
遺言執行者に関する手続きを当事務所に依頼することで、安心・確実な相続が実現できます。
当事務所では、遺言執行者業務受任、戸籍の調査取得、財産目録の作成、銀行口座解約、名義変更、各相続人への通知、事務手続き完了後、相続人の皆様に、遺言執行業務結果報告書をお渡しいたします。
また、相続人の皆様へ文書などを作成し、丁寧に説明を行います。
遺言執行業務に不安がある方は、当事務所の総合的なサポートをご活用いただくことで、安心して相続手続きを進めることができます。
9. まとめ|遺言執行者を正しく理解し、安心の相続準備を
遺言執行者を理解することが、安心の相続への第一歩
遺言執行者を正しく理解することは、安心して相続を迎えるための第一歩です。
遺言執行者の役割・選任方法・業務内容を把握することで、相続人の負担やトラブルを未然に防ぐことができます。
遺言書を作成する際には、出来る限り遺言執行者の指定をしておくことを強くおすすめいたします。
📊図解:遺言執行者をめぐる相続準備のポイント
| 項目 | 内容 | チェックポイント |
| 遺言執行者の役割 | 遺言内容の実現・手続きの代行 | 財産調査・名義変更・通知など |
| 選任方法 | 遺言書で指定/家庭裁判所で選任 | 遺言書に明記するのが最もスムーズ |
| 業務の流れ | 通知 → 調査 → 執行 →報告 | 計画的に進めることが重要 |
| 報酬と費用 | 数万円〜数十万円/専門家は別途報酬 | 費用対効果を考慮して選任 |
| 指定しない場合のリスク | 相続人の負担増/手続きの遅延 | トラブル防止のため指定を推奨 |
弊所行政書士あきつ事務所でも、遺言執行業務を行うことが出来ます。
まずはお話だけでも構いません。お気軽にご連絡ください。
福岡県飯塚市東徳前20番30号金澤ビル2階
行政書士あきつ事務所 行政書士 光野 肇 (ミツノハジメ)
090-8621-9966(事務所用携帯電話・直通)



